パスポートのいらない英国を“本物”へと育んだ英国紳士たち

ブリティッシュヒルズ創業30周年 記念対談
昆 和子氏(元駐日英国大使館商務官/株式会社農業技術通信社常務取締役)
佐野元泰(188bet体育_188bet体育在线@理事長)

日本国内にバスでも行ける真の英国を再現する。壮大なビジョンのもと誕生したブリティッシュヒルズを「本物」にしたのは英国の紳士たちでした。その幸運な出会いをもたらしたのは、創業5年後から15年にわたり開催された、駐日英国大使館と英国市場協議会共催の貿易促進セミナーです。このプログラムの担当者として、セミナーを実務面で支えたのは、同大使館の商務官を務めた昆和子氏。歴代の英国大使をはじめとする大使館高官や財界の要人と共に積み重ねた歴史を、昆氏と佐野元泰理事長が振り返ります。(本文中敬称略)


出会い
建物から内装まで全て本物。
バトラーまでいる。本当に驚きました

??昭和45(1970)年から駐日英国大使館で勤務を始めた昆和子は、商務部で日本と英国の貿易を促進する業務を担当していた。英国政府は昭和63(1988)年に開始した対日輸出キャンペーンを継続し、平成6(1994)年3月には「アクション?ジャパン」と呼ばれる新たなキャンペーンを開始。同年の7月7日、福島県天栄村にブリティッシュヒルズが創業した。学習院大学を卒業し、前年の4月に学校法人佐野学園に入職していた佐野元泰は、オープニングスタッフとしてブリティッシュヒルズに赴任した。

佐野:昆さんが最初にブリティッシュヒルズのプロジェクトを知ったのはいつでしたか?

昆:1980年代の終わり、私は駐日英国大使館で商務補佐官として勤務していたのですが、英国の外壁や建材、家具などの調達先を探してらっしゃる方がいるという情報が入りました。バブルがはじけた後だったから、こんな時にずいぶんとすごいことを考えている方がいるものだなと思って、大使館のスタッフに聞くと、「188bet体育_188bet体育在线@を経営する佐野学園の佐野さん」という方とのことでした。

佐野:僕の父、佐野隆治ですね。当時は佐野学園の理事長としてブリティッシュヒルズのプロジェクトを指揮していました。

昆:大使館としては、英国にとって良いビジネスになると考え、情報を提供しました。商務部は、飲食や化学など分野ごとに担当が細かく分かれていたけれど、佐野学園の問い合わせは多岐にわたっていたから、私が対応しました。部門を超える案件は私に来ることが多かったですね。それがブリティッシュヒルズとの出会いでした。

佐野:では、平成6(1994)年7月7日のオープニングセレモニーにもいらっしゃったのですか?

昆:残念ながら参加していません。初めて訪れたのは、平成7(1995)年の第1回「ザ?ブリティッシュ?アンバサダーズ?カップ」の時でした。来てみたら、もう本当に驚いた。建物から内装まで全て本物で、張りぼてではありません。サービスをしてくれるスタッフも英国連邦の人々ばかり。そして、バトラー(執事)のミスター?スタンブリー! 恭しく招き入れてくれるから、本当に気分がよかったですね。

佐野:本物の英国をつくることにこだわりましたからね。当時の駐日英国大使はジョン?ボイド卿でした。確か、ボイド卿はゴルフをプレーされない方で、アンバサダーズ?カップでも最初のティーショットを打ち終わると、その後はブリティッシュヒルズで館長を務めていた川田雄基さんと渓流釣りに行かれました。歴史学者でもあるボイド卿は「もし、この施設が大地震で埋まった後、3世紀も経ってから発掘されたら、考古学者たちはなぜ福島県から英国そのものが出てきたのか不思議に思うだろう」という知的なジョークをおっしゃり、ブリティッシュヒルズがいかに本物であるかを言葉にしていただきました(※1)。

※1 川田雄基名誉館長「本物の英国があることに誇りを持つ」 P6
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川田雄基名誉館長
文化の継承者がつないだ駐日英国大使館とのご縁

昆:川田さんは純英国風のプロトコル(儀礼)の専門家で、とてもお詳しかった。駐日英国大使が天皇陛下に年始のご挨拶へお伺いするとき、大使夫人の正装はどのようなものであれば適切かなど、ずいぶんと教えていただきました。歴代の大使たちも川田さんのプロトコルについては高く評価していました。だから、大使館の職員からもプロトコルに不安があるときは「ミスター川田に聞いてもらえないか」と相談されましたね。

佐野:そんなやりとりがあったのですね。川田さんは創業当初から、ブリティッシュヒルズを本物の英国とするために英国大使館との絆を深めようとされていました。

昆:川田さんは三菱商事からブリティッシュヒルズに来たとお聞きしました。

佐野:佐野学園の母体である神田外語学院は1960年代半ばから外国人教員を大勢採用し、本物の英語を学べる専門学校として成長を遂げてきました。外国人への対応が必要だったので、事務長として三菱商事から英語が堪能な人材を紹介していただいた時期があったのです。

昆:それで三菱商事とつながるわけですね。

佐野:ブリティッシュヒルズの建物の完成にめどが立って、ハードだけではなくソフト面でも真の英国にしなければということで、英国文化と歴史に精通し、語り部を担える館長として川田さんに来ていただきました。何しろ川田さんの祖父は川田龍吉男爵。明治初期に英国で造船を学んだ方ですからね。川田さんは生まれながらにして英国文化への造詣の深さを受け継いだ、まさに最適な人物でした(※2)。三菱商事で川田さんの上司を務められていたのが河村幹夫さん。シャーロック?ホームズの研究者としても著名な方でした。

昆:当時、三菱商事の会長を経て、相談役を務めていたのが諸橋晋六さんでした。諸橋さんは、BMC(英国市場協議会)の会長も務めていらっしゃいました。私も平成8(1996)年には駐日英国大使館の商務官になり、通商使節団や英国政府関係者の受け入れや日本企業?団体との交流業務に携わっていました。諸橋会長にブリティッシュヒルズの話をすると、「そんなすごい施設ができたのなら、BMC(英国市場協議会)に入ってもらおう」とおっしゃって、加盟をお願いすることになったのです。

佐野:BMC(英国市場協議会)のセミナーへとつながるきっかけですね。

※2 川田雄基名誉館長「本物の英国があることに誇りを持つ」 /memorial/interview_bh/02/interview_02_1.html


BMC(英国市場協議会)セミナーの始まり
本物の英国を再現した施設で
日英貿易を促進する場をつくる

昆:川田さんからご紹介していただき、BMC(英国市場協議会)の諸橋会長と当時の駐日英国大使館商務部参事官と一緒に佐野学園を訪ねました。BMC(英国市場協議会)が英国から日本への輸出を振興するとともに、日本企業の英国進出を後押しする活動をしていることを説明して、「ぜひ、ブリティッシュヒルズにも加盟してほしい」とお願いしました。佐野隆治理事長は快諾してくださり、私たちもブリティッシュヒルズを利用することを約束しました。

佐野:当時は円高でしたから、日本から英国への輸出が多かったでしょう。英国としては日本への輸出を増やしたかった。

昆:その通りです。だから、BMC(英国市場協議会)としても駐日英国大使館商務部と連携して、METI(通商産業省、現?経済産業省)、mipro(製品輸入促進協会、現?対日貿易投資交流促進協会)、JETRO(日本貿易振興会、現?日本貿易振興機構)からの補助金も活用しながら、対日輸出促進キャンペーンを行っていました。一連のキャンペーンが一区切りついたのが平成10(1998)年。かなり成果が出ていたから、活動を終わらせてはもったいないということで、「ブリティッシュヒルズで日英貿易促進のためのセミナーを開こう!」という話が決まったのですよ。「こんな本物の英国がある施設を遊ばせておいちゃいけない。もっと応援しよう!」という想いで、たくさん使わせていただきました。

佐野:平成11(1999)年からスタートした駐日英国大使館とBMC(英国市場協議会)の共催による「日英ビジネスパートナーシップセミナー」は、平成25(2013)年まで、東日本大震災の年を除き、14回にわたってブリティッシュヒルズで開催していただきました。

昆: BCCJ(在日英国商業会議所)からの参加もあったから、最大で100人ぐらい参加した年もあった。参加者の2割は英国人でしたね。


プロトコル?イベントの確立
パブリックスクールを思い出し懐かしい喜びに浸る英国人たち

??BMC(英国市場協議会)のセミナーにより、ブリティッシュヒルズは定期的に駐日英国大使館と商社などの財界人たちが参加するイベントの場を提供する機会を得た。創業期において、英国および日本のハイクラスな人々を満足させるイベントづくりに挑戦できる道筋が立ったのである。

佐野:セミナーをやることになって、何か面白い内容にしようと相談しましたね。

昆:そうそう。川田さんに相談して企画を立てて、まず、来場者にはアフタヌーンティーを楽しんでもらい、英国の雰囲気を味わってもらうことにしました。

佐野:ディナーについては、英国のロイヤルファミリーが日本の皇室を訪問した時の晩さん会の188bet体育_188bet体育在线@を川田さんが調べてくれました。鳩を使った料理もあったけど、さすがに用意できないから伊達鶏に代えた。晩さん会の188bet体育_188bet体育在线@を基本としながら、ブリティッシュヒルズのシェフが今風の華やかなディナーにしてくれました。

昆:素晴らしいものになりました。

佐野:でも、昆さんから送られてきたディナーの列席者リストの紙が1枚抜けていた時はさすがに青ざめましたよ。

昆:当時はファックスだったから。席次表を重ねて送信したら、1枚抜けていたの。

佐野:ディナーは凝った188bet体育_188bet体育在线@だから、仕入れている食材には限りがある。シェフに怒られながら、なんとか席数を増やして、皆さんの分をご用意できました。でも、思えばBMC(英国市場協議会)のセミナーを開かせていただいたことで、イベントのつくり方を昆さんから学びました。バグパイパーが演奏しながら皆さんを先導し、レセプションパーティーはリフェクトリー(メインダイニングルーム)の階上にあるVIP席「ロイヤルバルコニー」で楽しんでもらいましたね。

昆:ブリティッシュヒルズのリフェクトリーは、英国のパブリックスクールの集会場そのもの。セミナーに参加する大使や書記官たちはそういった名門校で学んでいたから、何か母校に帰ってきたような気になるのよね。ロイヤルバルコニーでのレセプションでは、「学生時代、この席はプロフェッサーしか使えなかったから、ここで食事ができて感動しているよ」とうれしそうに語っている方もいましたよ。

佐野:BMC(英国市場協議会)のセミナーではディナーの席次にもこだわりました。プロトコルに従って、フォーマルなパーティーはどうあるべきか真剣に検討を重ねていましたね。

昆:私も新たな参加者が増えるたびに、大使に「この席次で失礼はないですか」とお伺いしていました。

佐野:BMC(英国市場協議会)のセミナーで経験したことを、一つひとつ現場に落とし込んで次の企画に生かし、応用していく。当時のブリティッシュヒルズは、イベントを通じて集客の可能性を探っていたので、本当に良い経験になりました。


素顔の大使たち
“英国以上に英国らしい”
ブリティッシュヒルズ

?? BMC(英国市場協議会)のセミナーを通じてブリティッシュヒルズには、歴代の駐日英国大使が訪れるようになった。バスでも行ける日本国内にパスポートのいらない英国を創ることを目指したブリティッシュヒルズは、英国紳士のゲストを迎えたことで、「英国領のごとき空気感」が醸成されていったのである。

佐野:デイヴィッド?ライト卿(在任期間:平成8(1996)年?平成11(1999)年)には、「ブリティッシュヒルズは英国以上に英国らしい」とおっしゃっていただきました。

昆:「ブリティッシュヒルズは本物の英国なんだ。僕はマナーハウスの主人になった気持ちになる」とおっしゃっていました。ライト卿は英国政府貿易省の長官に就任するために大使の任期を終える半年前に帰国されたけれど、その年のBMC(英国市場協議会)セミナーに参加するために、休暇を取ってプライベートで英国からブリティッシュヒルズまで来てくれました。参加者はみんな大喜びでした。

佐野:後任の駐日英国大使は、スティーヴン?ゴマーサル卿(在任期間:平成11(1999)?平成16(2004)年)です。確か、在任中のある年のBMC(英国市場協議会)セミナーでは、あまりにも参加者が多くて、マナーハウスのキングズルームに泊まっていただいたことがありました。とにかく印象的なエピソードの多い大使でした。

昆:ゴマーサル卿は来日する前にロンドンでライト卿からBMC(英国市場協議会)のセミナーについて聞いていて、ブリティッシュヒルズに行くのを楽しみにしていたの。セミナーの翌日は白河メドウでゴルフコンペがあるけれど、ゴマーサル卿はテニスプレーヤーで、ゴルフはされない。でも、コンペに参加したいとゴルフ練習場でレッスンを始られたので、服装についても細かく説明しました。それなのにコンペの当日、なんとTシャツにジーンズで現れた。これはまずいということで、売店でポロシャツを買ったけれど、身長が高いからズボンは合うサイズがない。ゴルフ場と参加者の皆さんに「まったくの初心者なので勘弁してください」とおわびをしました。

佐野:よく覚えていますよ。昆さんがとても怒っていたのも(笑)。ゴマーサル卿は今もゴルフを続けているのですか?

昆:熱心なゴルファーになりました。今ではシングルプレーヤー?! 私もゴルフが大好きだから、ロンドンに行った時にコースを回ったこともあります。懐かしそうに「ブリティッシュヒルズと白河メドウでのゴルフは最高だったなぁ」とおっしゃっていましたよ。

佐野:ゴマーサル卿は駐日英国大使を退任した後、日立製作所の欧州総代表を務められましたね。日立は英国版の新幹線の開通にも寄与したので、ゴマーサル卿はまさに日本と英国の懸け橋です。

昆:ゴマーサル卿のお父様は鉄道関係の方で、ご本人も大の鉄道模型好き。ブリティッシュヒルズでのセミナーの帰りにも、白河駅近くにある工具店に寄り、ジオラマを作るための材料を買ってニコニコして車に戻ってきたのを覚えています。


東日本大震災
ブリティッシュヒルズを救った
大使の強い意志と科学的根拠

??昆は平成21 (2009)年8月に駐日英国大使館商務部を定年退職したが、その後も英国市場協議会の会員として英国大使館とのイベントなどでサポートを続けていた。前年、デイヴィッド?ウォーレン卿が駐日英国大使に就任した(在任期間:平成20(2008)年?平成24(2012)年)。そして、平成23(2011)年3月11日、東日本大震災が起きた。

佐野:震災発生後、ウォーレン卿は3月13日には被災地の宮城県に入り、数日間にわたり陣頭指揮を執り、英国人の安否を確認しつつ、日本人を励ましたと聞いています。その揺るぎない友好の姿勢の表れが、東京電力福島第一原子力発電所で事故が起きた後の対応でした。多くの国の大使館が放射能汚染の影響を懸念して、帰国したり、関西へ大使館機能を移したりするなかで、ウォーレン卿は「東京から避難する必要はない」という態度を明確に示してくれました。

昆:科学的根拠があったのよね。英国から派遣された科学技術分野の大使館員の専門分野が原子力だったの。専門家としての彼の存在と調査は大きかったと思いますね。

佐野:その専門家と、本国の緊急時科学助言グループ(SAGE)の科学的根拠に基づく見解、そして何よりもウォーレン卿の強い意志があったから、大阪に避難できる領事館があったのにもかかわらず、駐日英国大使館のスタッフたちは東京にとどまった。ブリティッシュヒルズについても、天栄村が放射能線量は低いことを確認し、英国大使館の専門家が「避難は100%必要ない」と断言してくれた。そのおかげで、外国人スタッフの動揺も収まって、全員が残ってくれたんです。

昆:原子力の専門家がいたことは幸運なことでしたね。他の分野の専門家だったら、そこまでは断言できなかったはずです。

佐野:外国人スタッフが残ったことで、僕はブリティッシュヒルズを必ず存続させると覚悟を決めました。でも、宿泊客は来ないから、外国人たちと一緒に福島県内で英語教育のボランティア活動をすることにしました。子どもたちが本当に喜んでくれて、その笑顔がまたモチベーションになりましたね。震災の年の11月には福島県内の高校生80人を招いて「福島から世界に羽ばたく君たち」という研修を行いました。県内の高校生に向けた応援プログラムです。

昆:その特別講義にウォーレン卿が来てくれたのよね。

佐野:ウォーレン卿への依頼に際しても、昆さんに協力してもらいました。

昆:ウォーレン卿が商務一等書記官として大使館に勤務していたころ、アシスタントとして付いていたから相談できたのよ。個人的な意見として、「ぜひ、講義をするべきです」と伝えた記憶があります。

佐野:ウォーレン卿は公務だと警備などが大掛かりになってしまうので、プライベートでブリティッシュヒルズに来てくださいました。特別講義を行って、高校生たちの質問にも丁寧に答えていただいた。日本と英国の友好関係を強調しながら、「英国人は日本人と共にある。英国は将来にわたって支援していきたい」というメッセージを伝えてくださったのが印象的でした。

福島民報「駐日英国大使が特別講義 ブリティッシュヒルズ 高校生、英語学ぶ」(平成23(2011)年11月20日)
http://shinsai.kandagaigo.ac.jp/wp-content/uploads/2011/11/20111120_bhamb.pdf

教育学術新聞「福島の高校生を応援 188bet体育_188bet体育在线@のブリティッシュH 英国大使が特別講義」(平成23(2011)年11月23日)
http://shinsai.kandagaigo.ac.jp/wp-content/uploads/2011/11/20111123_bhamb.pdf


展望
英国の優れた部分を吸収し、
世界で活躍できる若者を育てる

佐野:振り返ってみると、BMC(英国市場協議会)のセミナーを続けられたことで、ブリティッシュヒルズは駐日英国大使館との関係が深まり、ハイクラスの人々をお呼びできた。皆さんが口コミで宣伝してくれたことで、ブリティッシュヒルズの格が上がったことは確かです。いわば「英国大使館御用達」になれた。昆さんのおかげです。

昆:セミナーの参加者も、ブリティッシュヒルズに来てみて本物だと驚いて、興味のありそうな方に「行ってごらんよ、本物だよ」と言ってくれましたからね。

佐野:いくら言葉で説明しても分からない。でも、ここに来てみると一瞬で「本物だ!」と考えが変わる(笑)。僕自身について言えば、歴代の英国大使や諸橋会長をはじめ、ハイクラスの人々とお会いするときに、ブリティッシュヒルズの代表者としての存在感を出さなければならなかった。紳士としての立ち振る舞いができるように学び、自分を一気に引き上げた。27、28歳の若造だったので、とても鍛えられました。

昆:諸橋会長は英国が大好きで、エリザベス女王から勲章も頂いているほどの功労者。本当にブリティッシュヒルズをエンジョイされましたね。そして、とっても人が好き。佐野さんにも「おい、若者!この施設の経営は順調か!」と豪快に、気軽に声を掛けられていましたね。そして、フォルスタッフパブが大好き。ディナーの後、本当に遅くまでみんなで飲んでいました。シェイクスピア像のあるヤードコートでオペラの歌曲を歌いだす英国人もいて、大変な騒ぎだった。

佐野:翌朝、一般の宿泊客からクレームがあって、おわびしました(笑)。でも、それだけ、皆さんにリラックスしていただけたということですね。

昆:私もプライベートでブリティッシュヒルズを訪れるときがありますが、日本の政財界で活躍された方がファミリーで訪れているのをお見かけすることがあります。英国が好きだけれど、飛行機で10時間以上かけて行くのは難しい。でも、ブリティッシュヒルズであれば、東京から車で来られますからね。暖炉の火が入ったラウンジで古書を原文で読んだり、シガールームで葉巻をくゆらせたり。皆さん、本当にくつろいでらっしゃいます。

佐野:ブリティッシュヒルズは、そういったハイクラスの方々が安心して楽しめるリゾートでありながら、中高生や大学生が本物の英国を疑似体験できる環境で異文化と英語を学ぶ研修施設でもあります。創業期は顧客のターゲットが分からなくて試行錯誤していました。でも、英国を体現する象徴としての川田さんが英国文化を守り、真の英国を具現化することに愚直にこだわってくれたおかげで、そのポリシーを貫くことができた。そして、学校研修が増えていっても、「大人の社交場であることは貫くぞ!」とこだわった。結果として、学校の団体研修と高級路線のリゾートという対立軸がミックスされた唯一無二の施設へと成長できたのです。

昆:今では、予約が取れないくらいお客さんが増えた。よかったなぁと思います。

佐野:最近は子どもたちのマナーが良くなっているし、一般の大人の宿泊客の方々も子どもたちがいる様子を楽しんでいます。互いにリスペクトできるようになりました。30年かけて、両者が融合する文化ができつつありますね。

昆:私も小学生の孫を連れてきて、「あなたも大きくなったら、ここで英語を勉強して、英国で学びなさいね」と言っています。佐野隆治理事長が発案されたように、これからもたくさんの若者がここで海外の文化に慣れて、外国に飛び立ってほしいですね。

佐野:英国は経済大国ではないし、人口も6700万人ぐらいで日本の約半分。けれど、世界のなかで強い存在感を示しています。そして、英国人の知恵の使い方、コミュニケーションの取り方、スタンダードの作り方は一流です。同じ島国である日本は、英国から学べることがまだまだある。日本人は英国の優れた部分を吸収し、世界での活躍に応用できるはずです。ブリティッシュヒルズが、日本の若者にとって英国の文化と思考を学ぶ拠点となり、世界で通じる言葉と立ち振る舞いを養う場になれるよう、これからも挑戦していきたいですね。

昆:ぜひ、お願いします。また、大好きな冬の日に遊びに来ますね。


昆和子(こんかずこ)

昭和24(1949)年、岩手県生まれ。東京YWCA学院2年目の夏、昭和45(1970)年9月7日より駐日英国大使館商務部に勤務。昭和49(1974)年、英国トレードセンター会計事務?総務担当官として出向。昭和57(1982)年、駐日英国大使館に商務補佐官として帰任。平成8(1996)年、同大使館商務官に就任。平成13(2001)年、エリザベス女王陛下より名誉大英勲章第五位(MBE:Member of British Empire)を叙勲。平成21(2009)年、駐日英国大使館を定年退職。平成22(2010)年、株式会社農業技術通信社に入社し、常務取締役に就任。在日英国商業会議所名誉永年会員、英国市場協議会会員。

【参考文献】
東日本大震災発生当時、駐日英国大使を務めていたデイヴィッド?ウォーレン卿が取られた行動と英国の対応については下記の「新潮社フォーサイト」の記事に詳しい。

「ドキュメント3?11 イギリス大使館はなぜ「真実」を見抜けたか(上)」(執筆者:西川恵、188bet体育_188bet体育在线@3(2021)年3月8日掲載)
https://www.fsight.jp/articles/-/47787

「ドキュメント3?11 イギリス大使館はなぜ「真実」を見抜けたか(中)」(執筆者:西川恵、188bet体育_188bet体育在线@3(2021)年3月9日掲載)
https://www.fsight.jp/articles/-/47793

「ドキュメント3?11 イギリス大使館はなぜ「真実」を見抜けたか(下)」(執筆者:西川恵、188bet体育_188bet体育在线@3(2021)年3月10日掲載)
https://www.fsight.jp/articles/-/47797




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写真撮影:塩澤秀樹
取材?文:山口剛

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