奥田若菜先生(イベロアメリカ言語学科)が『貧困と連帯の人類学』を刊行!
奥田若菜先生が『貧困と連帯の人類学』を刊行!
目次
序 論 過剰と欠乏の息苦しさ
第一章 ブラジルの縮図としての首都ブラジリア
第二章 路上市場の民族誌
第三章 「汗をかいたカネ」と「伸びるカネ」
第四章 三つの一方的贈与――邪視?ねだり?物乞い
第五章 一方的贈与論
結 論 連帯の作法
奥田先生にお話をうかがいました。
「ブラジルが貧富の差が著しい国であることはよく知られています。私は現地での長期調査中、貧困地区と富裕地区を行き来していました。貧困地区の路上商人たちが数百円を得るために炎天下で立ち続ける一方で、富裕地区の人びとは時に一人数千円のランチを食べていました。バスでわずか数十分の距離に、二つの分断された世界があるように思えました。
格差社会ブラジルにおいて貧困層がどのような生活実践を行なっているのか――本書では「路上商人」に焦点をあてて、彼らの日常を描いています。富裕地区の人びとにとって、私が調査をした貧困地区は「混沌」と「危険」の象徴であり、足を運ぶなど考えられない場所です。日本人がブラジル貧困層の生活がどのようなものか想像できないように、実は格差社会ブラジルでは、富裕層も貧困地区の実態をよく知りません。
経済的に厳しい生活のなかで、彼らがどのように生きているのか、どのように互いに助け合っているのかを、「正しさの規範」と「善さの規範」という彼らの二つの規範から、明らかにしました。他者を手助けするには、相手を傷つけないための「贈与の作法」があり、それこそが連帯の継続に欠かせないのです。本書ではさらに、貧困に対する責任は誰にどこまで課されるのか、という責任の領域を考察しています。」
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