「今、確実に成長していると思います」
バンコクの中心街で彼にインタビューをすると、そんな答えがとても楽しそうな表情で返ってきた。毎日経験したことのないミッションを全力でこなし、疲れているはずだが、充実感が表情から垣間見えた。
「このインターンシップの参加者やチームメンバーに消極的な人はいないですし、みんなガツガツ自分の意見を言ってきます。でもそれで喧嘩になったり、難しい雰囲気になったりすることもないので、すごく良い環境で挑戦できていると思います」
近くで見ている我々もその言葉に同意できるくらい、実に伸び伸びと成長できる環境下でミッションに挑戦していたのは間違いない。特に参加者は何かしらサッカーに興味を持っていた同士たちということも大きかったのだろう。サッカーという共通言語があったことは大きかったと感じられた。
またこのインターンシップに参加した学生たちは、みんな一様に「自分の何かを変えたい、成長させたい」というモチベーションが高かったことも特筆すべき点だ。最近の若者は海外に目を向けない、と嘆くニュースなども見かけるが、そんなこともない。こうして海外で新しい挑戦に目を向ける学生は確実にいる。尚、彼らの取り組んできたことは、以下のような内容だ。
もしかしたら、「タイ語なんか話せないし???」と不安になる人と、「面白そう!」とワクワクしてくる人がいるかも知れないが、そもそも参加者のほとんどがタイ語は話せなかったし、重要な点はそこではないのだ。参加した学生たちはみんな、「タイ語がほとんど分からない中、どうしたらコミュニケーションを図れるか」というマインドにシフトし、いくつか策を考えた後、ワクワクした顔をしながら街中へ散らばっていった。
いわゆる「与えられた材料だけで考える」のではなく、「与えられた材料で足りなかったら、どうすれば良いか思考し、試行する力」が問われているのである。現在教育の流れ自体が思考力を問う流れになりつつあるが、確かに実際の社会に出てみると「与えられた材料で足りていた」というケースの方が圧倒的に少ない。
例えば簡単なタイ語を少しだけ覚えるだけでも効果はあるはずだ。日本でも街中で歩いている時に、外国人から「Excuse me」と声をかけられるより、拙い日本語でも「すみません、おしえてください」と声をかけられるだけで、かなり対応への抵抗感は減るように思える。
その後は英語だったり、あるいはボディランゲージだったり、ホワイトボードやスマホで絵を使いながらコミュニケーションしても良いはずだ。きっと答えは一つではない。
インターンシップの説明資料には、「与えられるものを待つのではなく、自ら考え、能動的に行動していく実行力?突破力が身につき、 コミュニケーション力やプレゼンテーション力、チームワークなど、実際のビジネスで必要になる力が得られます」と記載してあるが、彼らはそれを現場で実感できただろう。
実際、彼にインタビューすると、このような面白い回答が返ってきた。
「今回の経験のお陰で、知らない人に話しかけることに抵抗感がなくなりましたし、質問やインタビューなどを断られても全くめげなくなりました。タフになったと思います。またチームメンバーも前向きで、サッカーに関わる話だけでなく、考え方の視点などとても気づかされることが多かったです」
また同時に、彼と同じグループに入った国立大の学生からは、こんな感想も聞けた。
「カンタ(彼の愛称)はどんどん街中でもタイ人に話しかけていって、コミュニケーション能力が高いな、と思いました」
お互いがお互いに刺激し合っていたようだ。
サッカーが大好きな仲間が集まり、一つの同じことに取り組み、意見を伝えあい、形にしていく。これから彼らが社会に出て、ビジネスの現場で体験するような「リアル」が、縮図として詰まったインターンシップであったと感じた。
最終回は帰国後のインタビューをお届けしたい。