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かっこいい英語教師を目指して、今も奮闘中!

こんにちは。2018年に英米語学科を卒業した白川智也と申します。現在は母校の隣の私立中高一貫校で英語科の教員をしています。今回、このような機会をいただきましたので、在学中に取り組んだことや、卒業してから現在の職に就くまでの経緯、その中に大学院で勉強した言語学習における動機付けなども絡めながら、私の過去を振り返りつつ、ご紹介できればと思います。通常とは違うコースを辿りましたが、そういう道もあると思って読んでいただければ幸いです。

かっこいい英語教師を目指して、イギリスに留学

?私は大学受験の時から英語の教員になることを目指していました。唯一得意と言えるのが英語であり、「得意なことで仕事がしたい」と、当時はその程度の考えではあったものの、やるからには英語が流暢に話せるかっこいい教師になりたいと思うところもあって、大学での英語学習や授業は本当に頑張りました。

1年生の時に、かっこいい教師は海外経験も必要だし、英語圏に行けば英語も上達するだろうという安易な考えで留学を考え始めました。ただ、当時のカリキュラムでは、4年で卒業し、教員免許を取って、留学もする、となると2年生の後期から半年間の留学しか選択肢がありませんでした。

ですが、第3希望ながら、イギリスのセントラルランカシャー大学へ交換留学で行けることになり、せっかく留学するなら出来るだけ長い方がよいと思い、1年間行くことを決意。交換留学は単位振替ができるので、4年で卒業可能でしたが、就職を考えて5年目も在籍することが、この時点で確定しました。

このイギリスでの1年間で特に意識したのは、英語力を伸ばすために日本人との交流を避け、なるべく外に出て仲間と交流したり一緒に勉強したりすることでした。理解するのが困難な本を図書館で深夜まで読み漁り、学期末には膨大な量のエッセイ課題を書きました。

また、当時19歳でしたがイギリスでは飲酒可能だったので一緒に飲み歩いた友人たちとは今も連絡し合う仲間です。自分の英語が通じないこともあれば、車の窓から「ニーハオ!」と声を掛けられたこともしょっちゅうでしたが、本当に楽しく、この1年間は私の人生において意味のある経験となったのです。

言語学習における動機付け理論から自分自身を分析すると…

?これまでの英語学習を動機付け理論に絡めて振り返ってみます。大学の授業を頑張る、留学に行きたいという想い、留学先で積極的に人と関わるなど、これらの行動を引き起こした動機(モチベーション)は「理想の教員像に近づくため」だったといえます。

専門用語でいうとideal-self(理想自己)と言いますが、特に言語学習においては最終地点がわかっていると、それに向けて現在の自分(current-self)との距離を縮めようと行動が引き起こされやすいと言われています。その最終地点は私のように「こんな教員になりたい」でもいいし、「海外で仕事がしたい」でも「ペラペラになりたい」でもいいのです。

理想の自分像が詳細に想像できればできるほど、やるべきことが明確になり、行動に結びつきやすいとされています。私の場合は、「英語を流暢に話せる」「生徒に共有できるような海外経験を持っている」「正しい文法で英語を使える」など、単なる「ペラペラ」よりも詳細な自分の理想をイメージできていたのではないかと考えています。

交換留学を終えて、大学に戻り、再びイギリスの大学院留学へ

?交換留学を終えて帰ってきた時は、すでに3年生の後期。周りは就活や教員採用試験の準備を始めていました。その後、同級生と一緒に卒業し、5年目の1年間を科目等履修生として過ごしながら色々な経験を積み重ねました。

まず、教育実習は大変な体験でしたが、改めて教員になりたいという思いを強くするものでした。また、アルバイト先で知り合ったインターナショナルスクールの外国人の先生の紹介で、そのスクールのアシスタントとして働くことになり、可愛い子供たちとも関わりを持つことができました。

さらに、第二言語習得研究や応用言語学に興味を持ち、研究論文にまとめたところ、幸いにも、KUISの先生が編集者をしている国際ジャーナルに掲載され、学会で発表もさせていただきました。この研究活動を通して、もっと動機付けや英語学習について勉強し、未来の仕事に活かそうと考え始め、大学院に進むことを決意したのです。

そして、KUISの学生支援部のご尽力もあって大学院留学のための給付型奨学金を受給できることになり、イギリスのウォーリック大学の修士課程でTESOLを学ぶことになりました。TESOLはTeaching English to the Speakers of Other Languagesの略で、「第二言語として英語を学習する人への英語の教え方」とでも言いましょうか、まさに自分にぴったりのコースでした。

前回の交換留学の時のような遊ぶ時間はほとんどなく、必死に勉強していたらあっという間に1年が終わったというのが正直な感覚ですが、ここでも著名な教授陣や優秀な仲間に出会い、有益であっただけではなく、大変多くの学びがあったことはいうまでもありません。

大学院では、英語力の部分に不安はなかったので、英語教育の知識を得ることに全力投球。より多くを学ぶために、授業での積極的な発言をはじめ、仲間との意見交換、そして先生への質問など、結果的に英語力を高めることにも繋がりました。同じ海外留学でも、自分の行動と理由に変化が生じているのがわかります。

ちなみに、「留学した方がいいですか?」とよく質問されますが、私は、行けるなら是非行った方がよいと考えています。海外でしかできない経験はその人にとって財産になるからです。

ただし、その留学を有意義なものにするためには、

第一に目標が明確であること

第二にその目標達成のために考えて行動できること

第三にそのためなら多少の殻なら破れること

が必要不可欠だと考えています。

例えば、海外に住んでいるというだけでは語学力は伸びません。1年間ネットで日本語のドラマだけを見て過ごすこともできるからです。留学経験もなく、まして海外旅行の経験もない友人が流暢に英語を話すことができたことを考えると、親や世間が勧めるからではなく、自分が必要だと思って目指すことが一歩先を進むための要素なのかもしれません。

英語力の維持ではなく向上を目指す

?もう一つ、「英語力の維持」も英語科教員としてはよく話題になります。私の勤務校は、東大をはじめとしてトップレベルの大学を目指す生徒がいる進学校ですが、これまでの経験をペースに、より向上させなければならないと思いながら授業の準備をしています。

かつて、KUISの酒井邦弥元学長がブリティッシュヒルズで実施される研修の際、「教えることが一番いい勉強なんだから、本当は先生がお金を払わないといけない。だから君たちはいろんなことを新入生に教えてあげてください。」と引率側の学生を激励してくださったことが心に強く残っています。

生徒たちにはよく「説明できたらわかっている証拠」だと伝えていることもあり、私自身、単語も文法も読解も、しっかり説明できるように準備をしています。そして、知っていることを全部教えるのではなく、どこが本当に必要かを厳選して伝えるようにしています。すると、いまだに自分がいろいろとわかっていないことに気が付くのです。

中学1~2年生レベルの教科書では、それほど難しい内容は扱いませんが、英語を学び始めたばかりの生徒に語順や文法を理解させるのは簡単ではありません。自分自身がしっかり理解した上で教える必要があると切実に感じています。

最近、中学で習う助動詞の一つである「can」の意味についてかなり時間をかけて調べたのですが、初めて知ることがたくさんありました。もし、英語科の教員の方がいらしたら、助動詞を何か一つ調べてみることをお勧めします。まず、どんな書籍で調べたらよいのか、というところから勉強になりました。

英語を教える仕事をしている私たちの願いは、最終的には生徒に英語の力が付くことですが、自分自身の英語力を「向上」させることを目指していくことも大切ではないでしょうか。

人生は想定外ばかりだからこそ学びが深まるのでは

?大学院修了間際に少しだけ就活をしました。年度の途中ということで学校での教員のポジションは見つからなかったので、9月に修士論文を書き終えて、半年ほど英語のパーソナルトレーナーの仕事をしました。教員になるまでのつなぎの仕事のつもりでしたが、接客業特有の話し方や教え方は非常に勉強になりました。そして翌年4月、ようやく現在の職に就いたのです。

振り返って思うのは、何事も計画通りにはいかないということです。それでも最終地点さえブレなければ道を大きく間違うことはないということを伝えたいです。

自分の場合、そもそもKUISは第1志望の大学ではなかったこと、最初の留学先は第3希望で、留学先の授業が難しく課題の大変さや、大学に5年在籍することも想定外。アルバイト先で仕事を紹介されるとは思いも寄らなかっただけでなく、自分が論文を書くなんて家族も驚いていた程です。

唯一想定内だったことは、自分にとっての最終地点である「立派な英語教師になること」で、大学受験の時から考えは変わらず、そのために常にできることをしてきたつもりです。そのおかげで、今は胸を張って英語を教えることができていますし、KUISに入って本当によかったと実感しています。

現在教員2年目で、今年から担任も持つようになりました。非常に忙しい毎日ですが、生徒たちの前に立つと自然とスイッチが入り、楽しく授業ができています。周りの先生方を見ていると自分は教育者としても、英語教師としてもまだまだだと感じる毎日ですが、隣に見える母校での出来事を思い出しながらこれからも精進していきます。

2018年
英米語学科卒業
白川 智也