2008年に英米語学科を卒業した清水奈穂子(旧姓:福田)です。卒業してからも不思議なご縁で繋がっているゼミの友人の紹介で、この度、このような機会をいただき感謝しています。
最初は私のような平凡な人間が何か皆様にお伝えできることがあるのかと思い悩みましたが、これまでの自分と向き合う機会をもらったと前向きに捉えて、書いてみることにしました。こんな機会でもなければ、自分がこれまでどのように人生の選択をして、これからどうしていくべきかを考えることもないままだったかもしれません。
さて、私のこれまでの経歴を簡単にご紹介します。青森から上京し、在学中は教職課程を履修。大学卒業後は、地元に帰って母校の私立中高一貫校で英語教諭として6年間勤務し、結婚を機に退職。
その後、在職中から続けていた趣味の着付けで自分の教室を開業する夢を実現するために免許を取得。無事開業しましたが、軌道にのるまでは副業として児童英語教育の分野で講師をしながら、着付けの仕事を続けていました。
少子化の影響もあり、私の住む地域では英語教育よりも日本語教育を必要とする外国人児童や技能実習生が多く、日本語教育の需要が増えていることに気づき、児童英語の仕事を退職。
ほぼ同時期に縁あって所属することになったNPO法人の日本語教育活動に興味を持ち、本格的に日本語講師の勉強をすることを決心。新幹線で1時間ほどの距離にある専門学校へ入学。無事に資格を取得。
現在はNPO法人の日本語講師として、平日の昼間は市内小中学校の外国人児童への日本語教育支援活動(主に日本語の取り出し授業)や企業や社会人向けの日本語の授業(対面形式とオンラインの両方)を担当しながら、週末は着付けの仕事をしています。
着付けの仕事といってもさまざまで、一番イメージしやすいのは成人式ではないでしょうか。こちらの地域では、師走のクリスマス時期に成人式の前撮りが行われ、年が明けるとすぐに成人式が開催されます。その時期は繁忙期で、例年成人式当日には約150人の新成人の皆様の着付けを複数の着付け師で担当しています。その他には、入学式、卒業式や結婚式など人生の大切な節目に着付けをする機会も多いです。
着物の世界を覗くきっかけをくれた母
着付けの世界に入ることになったきっかけは、着物が大好きな母の影響です。家にある着物を活かしたい、自分で着られるようになりたいと思ったことがきっかけで、母の知人(のちに恩師)の着付け教室に通いました。
恩師との出会いで、一気に着付けの世界に魅了され、今日まで続けることができています。近年特に力を入れているのは、留学生への着付けです。着付けの先生方は、日々お稽古や自主練をしながら本番にベストを尽くせるように努力しています。
自主練といっても、自宅にある人体模型に着せることくらいしか練習できませんが、私の所属する着付け講師会では、月に一度、振袖研修会を実施しており、その研修会に留学生を招待し、着物を着てみたい留学生は無料で着物を着ることができます。先生方は実践に近い形で練習ができるようになっています。
なぜ日頃から練習が必要なのか不思議に思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。実は、着物の着付けをするにはスピード感が必要な時もあれば、帯の結び方も多様になっているぶん、コツを忘れないようにだとか、新たな結び方の練習といった様々なことが理由として挙げられます。
また、振袖にあわせる帯は分厚く、長さも決まっています。お客様の体型に合わせて、最初の配分を決めてから全体のバランスを考えて、決められた時間で、その方の好みにあわせた帯結びを完成させなければなりません。同時にいろいろなことを考えるので頭も使いますし、割と体力を使うものなのです。
「不思議なご縁」が次のステージへと進む私の活力
振り返ると教育の現場では、英語以外の仕事が8割でした。成績処理やさまざまな書類はExcelを用いたもので、電子黒板やタブレットの導入などでパソコンやその他のツールを使いこなせなければならない状況でした。
加えて保護者対応の接遇や上司の送迎のマナー、その他事務作業など、学ぶべきことが山積みだったことを思い出します。そこでの学びが現在の仕事にも生かされていますし、今でもたくさん新しいことを学び続ける毎日を過ごしています。
大学時代に出会った友人たちは、さまざまな分野で活躍しています。さまざまな言語を学んだ集団が、世の中に出てまた新しい分野を極める社会の一員になっています。英語に捉われない、どんな仕事も過去に経験したことと必ずつながっていて、出会ったものすべてが枝分かれしてのちに大きな木になっていくと教えてもらい、「そんな道もあったんだ」と気づかされることも多いものです。
先に述べたように、大学時代に出会った友人との「不思議なご縁」が、次のステージへと進む私の活力になっていると確信しています。心がけているのは、英語以外にできることを増やす。私にしかできないこと、デジタルではどうにもならないこと、機械にはできないことを見つけて、その隙間に自分がやるべきことがあると考えています。
みなさんは「孫の手」をご存知ですか。最近では使う人は少ないかもしれませんが、古き良き時代の背中をかくための便利な道具です。私の生き方は、まさに孫の手。「かゆいところに手が届く」そんな働き方ができたらいいなと日々思っています。
商売として、仕事として成り立つことはもちろん最重要課題ではありますが、大金をもらってもやりたくない仕事はやりたくないし、やりたいことだけで食べていくことはとても難しいこともわかっています。
それでも、呼ばれたらどこへでも駆けつける、なんでもできる、なんでもやってみる、フットワークの軽さだけは自慢できることとして、自信を持って続けていきたいと思っています。その先に、きっと私が次に目指す新たな目標があると信じ続けて。
1日で着られるようになる浴衣。気軽に着てみませんか?
着物を着る人は減少傾向にありますが、着付け師も高齢化が著しく、どちらも不足しているように感じます。「日本といえば着物」という考えはもう古いと言われるかもしれませんが、最近流行りの横文字の政策などには、割と通じるものがあるとも思います。
浴衣は1日練習すればすぐに着られるようになります。最近では着付けの動画も増え、動画を見ながら着ている方も多いようです。数年前から地元の中学校で浴衣の授業のご依頼も増えてきました。
旅館にある浴衣を着こなせたらいいですよね。暑い日が続いているようですが、浴衣や着物は実はとても涼しいんですよ!着物に限らず、日本ならではのものをもっと大切にしたいと一人でも多くの方が思って興味を持ってくれたら嬉しいです。
2008年卒
英米語学科
清水 奈穂子(旧姓:福田)