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フィルム?ツーリズム:北海道小樽市「Love Letter」「First Love 初恋」「さよならのつづき」

2025.03.17

映画「Love Letter」「First Love 初恋」、Netflixドラマ「さよならのつづき」の舞台となった北海道小樽市を事例にして、「フィルム?ツーリズ」についてまとめました。

岩井俊二監督『Love Letter』(1995年)とプルースト『失われた時を求めて』

30年前の1995年3月、日本映画『Love Letter』が公開されました。中山美穂さん(故人)、豊川悦司さんが主演。岩井俊二監督の劇場用長編第1作で、公開翌年に、日本アカデミー賞(優秀作品賞)を受賞した名作です。

「拝啓、藤井 樹(いつき)様。お元気ですか? 私は元気です。」婚約者を亡くした渡辺博子(中山美穂さん)は、忘れられない彼への思いから、彼が昔住んでいた小樽へと手紙を出す。すると、来るはずのない返事が返って来る。それをきっかけにして、彼と同姓同名で中学時代、彼と同級生だった女性との文通が始まる??????。

この映画の最終シーンで、20世紀を代表する傑作、フランス人作家マルセル?プルーストの長編小説『失われた時を求めて』とその図書カードの「伏線」が見事に回収されます。

ロケ地「小樽」の人気は衰えを知らず!

『Love Letter』は、日本につづき、海外でもアジアを中心に公開され大きな話題を呼びました。舞台となった小樽(北海道)の風景が美しく、「雪」に憧れ、運河沿いを散策したいと、アジアからの多くの観光客が訪れました。

特に、金大中(キム?デジュン)政権時代に始まった「日本大衆文化開放」の翌年(1999年)に韓国で公開され、大ヒット。この映画の中で松田聖子さんの大ヒット曲「青い珊瑚礁」が話題になります。2024年6月、K-POP人気ガールズグループ「NewJeans」(NJZ)のハニさんが、東京ドーム公演でこの「青い珊瑚礁」をソロで披露。それがきっかけで発生した韓国内での「青い珊瑚礁」ブーム。その遠因には現在でも衰えを知らぬ『Love Letter』の人気があるとされます。

また、2020年1月公開の岩井監督の『ラストレター』(主演は松たか子さん)が、映画『Love Letter』に対する「アンサー映画」(返答として制作された映画)にもなっているということで、再び『Love Letter』に対する内外のファンの注目が集まりました。そうした背景もあり、公開から30年経過した現在でも、『Love Letter』の映画のロケ地小樽を訪れる海外のファンが後をたたないそうです。

この『Love Letter』は「フィルム?ツーリズム」の成功例としてしばしば引き合いに出されます。

「フィルム?ツーリズム」の成功例としての『Love Letter』

高崎商科大学の岩下千恵子教授(専門:観光社会学/観光マーケティング)が「フィルム?ツーリズム」をわかりやすく説明しているので紹介します(出所:高崎商科大学ウェッブサイト「TUCコラム」)。

「フィルム?ツーリズム」とは、「映画?ドラマなどの撮影に使われた場所やゆかりの場所、モデルとなった場所などを旅する観光モデルのことを言います。???「ローマの休日」に出てくる「スペイン広場」や「真実の口」といった場所を訪れて、「オードリー?ヘプバーンってこうだったよね」「ここでこうしてたよね」など、映画のシーンを思いながら楽しむ。」

「そのような思い入れや付加価値を楽しむのが、フィルム?ツーリズムの醍醐味」となり、「その作品を知らない人からすると何の変哲もない場所が、作品を知っている人からすると特別な場所になる」と岩下教授は解説します。

映画ロケ地に選ばれることが「地元への誇り/愛着」につながる!

(1) 撮影場所が注目されれば、観光客の誘引効果になる。(2) 撮影隊/関係者がその場所で宿泊や食事をすれば、多様な形態の消費活動が生まれ地域経済の活性化につながる。

岩下教授は、こうしたプラスの効果(観光客や撮影隊など外側からの影響)に加えて、「内側への影響、つまり「地元への誇り」とか「地元への愛着」などに結びつく場合もある」ことに着目します。

例えば、自分の住んでいる場所がテレビや映画の舞台として使われるとうれしく感じる。さらに、地元で撮影があると、エキストラとして作品に関わるチャンスも生まれる。こうした「地元が撮影に使われた!」「地元で作品の製作に関わることができた!」という喜びが、地元への愛着に結びつく。岩下教授はそう述べています。

「北海道三大夜景」のひとつ小樽天狗山

映画『Love Letter』の主要なロケ地で使われていたのが、前述のとおり北海道小樽市。映画の冒頭で使われた、渡辺博子(中山美穂さん)が雪の上を走っていた場所は、小樽のシンボルともいえる天狗山スキー場だといわれています(映画の中では「神戸市」)。

小樽市は北海道の西海岸に位置。札幌駅から快速列車で30分強。人口は約10.5万人(2024年7月末現在)。寒暖の差が小さいため過ごしやすく、四季折々の豊かな自然を満喫することができます。明治~大正期の近代化によって大いに発展し戦前には貿易港そしてニシン漁の拠点として繁栄。

その当時に作られた近代的な建物や倉庫、運河が、現在もそのままの姿で佇み、街全体がノスタルジックなムードに包まれています。その結果、SNS画像/動画用に格好の素材も提供してくれます。

天狗山までは小樽市内中心部から車でわずか15分。標高は532.4mと控えめな高さ。山麓から山頂の展望台までは、ロープウェイで約4分。目の前に広がるのは、まるで時が止まったかのような小樽の街並み。そのノスタルジックな景色の中を、空中散歩のように進んでいきます。 

山頂にたどり着けば、そこには息をのむ絶景。眼下に広がる市街地はまるで精巧な箱庭。その向こうには小樽港、石狩湾、さらに晴天の日には遠く暑寒別(しょかんべつ)連峰や積丹(しゃこたん)半島までも一望できます。その美しさで、「ミシュラン?グリーンガイド?ジャポン」(日本を訪れる外国人観光客向けガイドブック)で一つ星を獲得。 

この天狗山がもうひとつの顔を見せるのは夜。函館山や藻岩山(もいわやま)と並び「北海道三大夜景」のひとつに数えられるその夜景は、宝石箱をひっくり返したような輝きを放ちます。

銭函海岸、小樽運河、薬師神社の坂

『Love Letter』公開から27年経過した2022年11月。人気シンガーソングライーター、宇多田ヒカルさんの名曲「First Love」と「初恋」をモチーフにしたラブストーリー『First Love 初恋』(Netflixオリジナルドラマ)が配信されました。佐藤健さんと満島ひかりさんがW主演。日本だけでなく、台湾、香港、フィリピンなどでも大ヒットしました。

舞台は1990年代後半の北海道。高校生の也英(八木莉可子さん)はクラスメイトの晴道(木戸大聖さん)と恋に落ちる。かけがえのない思い出を積み重ねていく2人だったが、悲運が訪れ、也英と晴道は別々の道を歩むことになる。それから約20年の時が過ぎ、30代になった也英(満島ひかりさん)と晴道(佐藤健さん)は再会を果たす???

脚本と監督を務めたのは、岩井俊二監督に師事したこともある寒竹ゆり氏。この『First Love 初恋』でも、天狗山、銭函(ぜにばこ)海岸、小樽運河、薬師神社の坂など小樽の各所がロケ地として使われています。また、『First Love 初恋』の第8話「或る午後のプルースト効果」では、文字通り、映画『Love Letter』で鍵となった作家「プルースト」に由来する「プルースト効果」がストーリーの展開の鍵となっています。

「プルースト効果」とは、特定のにおいが、それに結びつく記憶や感情を呼び起こす現象。名称は、岩井監督の『Love Letter』でもキーとなったマルセル?プルーストの『失われた時を求めて』の中で、主人公がマドレーヌを紅茶に浸した際、その香りで幼少時代を思い出す場面に由来するとされます。つまり、岩井監督の『Love Letter』と寒竹監督の『First Love 初恋』がプルーストによってリンクされているのです。

『さよならのつづき』 予告編  (By Netflix)

そして、2024年11月14日。『First Love 初恋』に続いて、小樽を舞台にする話題の恋愛ドラマ『さよならのつづき』がNetflixにより世界同時配信されました。主演は有村架純さんと坂口健太郎さん。オリジナル脚本は岡田惠和氏。監督は黒崎 博氏。主題歌は米津玄師氏「Azalea」。

北海道のコーヒー製造会社で働く、菅原さえ子(有村架純さん)。プロポーズを受けたその日に最愛の恋人雄介(生田斗真さん)を交通事故で亡くしてしまう悲劇に遭遇。恋人を忘れられずに生活していくなか、重い心臓病に苦しむ大学職員の成瀬和正(坂口健太郎)に偶然出会う。さえ子と成瀬はお互いに何かの縁を感じ好意を持ちながら、運命のように引き寄せられていく。そして、お互いの事情が明らかになるうちに、さえ子と成瀬の二人は、成瀬が彼女の恋人の心臓を移植されたことを知る???

ドラマの中で、小樽運河、小樽商科大学、小樽駅、raft Liquor Bar SHARAKU(小樽駅近くの梁川商店街)、旧国鉄手宮線などが重要なシーンとして映し出されます。たびたび登場する雄介の友人のおしゃれなカフェ「MARU COFFEE」は小樽運河の使われていない倉庫を活用してセットを組んだそうです。

ここまで紹介したように、3つのラブストーリー『Love Letter』『First Love 初恋』『さよならのつづき』は、小樽の自然や街並みを舞台にして生まれました。次に、その小樽を舞台に、どのような名作が誕生するのか。映画/ドラマファンの期待が膨らみます。

継続的な情報発信、招致活動とオーバーツーリズム対策

上記の小樽の事例が示すとおり、地域経済の活性化や地方創生に対して大きな可能性を持っている「フィルム?ツーリズム」ですが、その一般的な課題について、最後にいくつか整理しておきましょう。

第1に、ブームによる観光客の増加などが一過性に終わらないように、戦略にもとづき継続的に撮影の誘致活動を展開することが大切です。

第2に、情報発信に関して、撮影隊、映画会社、芸能プロダクションなどとコミュニケーションを密にとることが求められます。公開できる情報量やスケジュールなど映画の製作サイドの利益を保護するため、ロケ地となった地域/都市/フィルムコミッションがプロモーション素材の制約に直面するケースがあるからです。

第3に、ロケ地となった地域/都市のプロモーションのための準備(SNS用のデジタル素材の剪定、「ロケ地マップ」の作成など)を、映画の告知/公開やタイミングに合わせて滞りなく進めなければなりません。さらに映画の公開が終了したのちこそ、継続的に情報を提供していくことも必要となります。

第4に、映画ファンがロケ地に押し寄せることにともなって発生が懸念される「オーバーツーリズム」(観光公害)の対策などについて地元行政/観光協会/コミュニティ/地域住民と十分に意思疎通を図っておくことが重要となります。

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