マーケティング最前線!

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タピオカブームが去っても台湾ティーカフェ「ゴンチャ」(Gong cha)の人気は継続/拡大中!学割サービスで学生のリピ続出!

2025.01.06

台湾ティーカフェ「ゴンチャ」(Gong cha)の人気が継続/拡大中です。あの「タピオカブーム」が下火になったなかで、同社が好調を維持している要因をまとめてみました。

コーヒーが苦手だと感じている人は全体で「2割」ぐらい!

マーケティングリサーチ会社「クロス?マーケティング」の「コーヒーに関する調査(2023年)」(n=1,100、2023年4 月26日)によると、「コーヒーが好きと回答した人は約7割で、若年層ほどコーヒー好きの割合は低くなる傾向」が明らかとなりました。20代では「好き」と答えた人が「55.9%」、30代では「64.1%」。逆に考えれば、20代の「44.1%」、30代の「35.9%」は「コーヒーが好きではない」ということになります。

情報サイト「Sirabee」(「しらべぇ編集部」2020年3月28日記事)は、全国10?60代の男女1,733名を対象に「飲み物について」の調査を実施した結果、「コーヒーが苦手だ」と答えた人は全体で「21.6%」だったと報じています。

コーヒーが苦手と感じている主な理由として、(1)コーヒーの苦味や渋みなどの味が苦手、(2)カフェインが苦手/飲めないことがあげられるようです。

ゴンチャの顧客の約8割が女性で、リピート率は約7割

こうした調査が示すとおり、すべての人がコーヒーを好むわけではないなか、その「代替飲料」のひとつとして考えられるのが「ティー」(お茶/紅茶)です。そのティーに関して、10代、20代の女性の間で特に人気が高いのが台湾ティーカフェ「ゴンチャ」(ゴンチャジャパン:東京都港区)です。同社によると、ゴンチャのブランドの全体認知率は約6割ですが、10~29歳の女性に限定すると、約9割に達しているそうです。実際、同社の顧客の約8割が女性でそのリピーター率は約7割。

2006年に台湾で誕生したゴンチャ(Gong cha)は、現在世界で約2,000店舗を展開しています(2023年7月時点)。ブランド名は、いにしえの中国において希少な最高品質の「極上のお茶」を皇帝に献上したしきたり、「貢(みつ)ぐ茶 」(ゴンチャ)に由来。

現在日本では、空前のカフェブームが発生しているとされます。週末や休日に、どこのカフェも満席で入れない「カフェ難民」を体験した人も少なくないでしょう。こうした現象の背景として、(1)自宅でも職場でもない「自分の居場所」としてカフェを利用する機会の増加、(2)プライベートな時間を過ごすだけでなく、ビジネスやコミュニケーションの場としてのカフェ機能拡大、(3)デジタル時代に合わせて変化する働き方を実現する場としてのカフェの役割増大、などがあげられます。

ゴンチャの店舗数は約160店

国内のカフェの店舗数に目を向けると、No1は「スターバックスコーヒー」で1,948店。第2位が「ドトール コーヒー」(エクセルシオールカフェなどを含む)1,282店、「コメダ珈琲店」1,004店 (店舗数は各社ウェッブサイト情報にもとづく)。一方、ゴンチャは約162店(2024年8月1日現在)です。

上記の大手3社カフェチェーンの店舗規模には及びませんが、ゴンチャジャパンの2024年第1四半期(1~3月)の売上高は、既存店前年同期比約1.2倍と好調を維持しています(『日経クロストレンド』2024年07月26日記事)。

2018年ごろ、日本では、女子高生を中心に「タピオカドリンクブーム」が起こりました。「タピオカ」とはキャッサバ芋のデンプンのこと。ドリンクなどに入れられる球状の加工品は「タピオカパール」と呼ばれます。

そのブームをけん引したカフェの一つが「ゴンチャ」。当時、「タピる」「タピ活」といった流行語も誕生。東京?原宿などのタピオカドリンク店に行列ができている様子はメディアでも頻繁に報道され、Instagramなどのソーシャルメディアでも情報が拡散。

2018年のブームの背景には「安近短」の旅行人気もありました。LCC(格安航空会社)の就航によって海外旅行が安価になり、近場の台湾旅行が人気となり、本場のタピオカミルクティに注目が集まりそれが国内でのブームに影響したといわれています。タピオカ粉と黒糖でできている「タピオカパール」と緑茶に似た台湾茶の組み合わせは和菓子に近く、日本人が慣れ親しんだ味覚です。さらに、半発酵の台湾茶が、日本茶と同様に胃もたれしにくい点も若い女性に好まれたそうです。

最高品質の「台湾茶」と製法への強いこだわり

現在、タピオカブームは下火となっていますが、依然としてゴンチャは好調を維持しています。

ゴンチャジャパンのウェッブサイト、テレ東BIZ『カンブリア宮殿』(2024年8月29日)、『日経クロストレンド』(2024年07月26日)、『AdverTimes.』(アドバタイムズ、宣伝会議、2024年7月23日)の記事などをもとに、ゴンチャの成功要因をいくつか抽出しましょう。

第1が「高品質な素材と製法へのこだわり」です。「台湾茶」の起源は、中国の福建省から台湾へ渡った茶の木。島国の独特な気候と地理的条件により、独自に発展し、台湾の独自製法でつくられるようになったお茶が「台湾茶」。

ゴンチャが使っている「阿里山(ありさん)ウーロンティー」は、台湾南部の阿里山で栽培される茶葉。100グラム約7,000円(普通の茶葉の3倍)。ゴンチャ提供のベースティーは、以下の3種類。「不発酵茶」の「ジャスミン グリーンティー」(緑茶)、最も馴染み深い台湾茶の「半発酵茶」の「烏龍ティー」(烏龍茶)。英国紅茶文化の影響を受け、中国で独自に発展した「全発酵茶」の「ブラックティー」(紅茶)。

抽出時にはそれぞれの茶葉に合わせ、湯の温度や抽出時間まで調整して、最高の味わいを引き出しています。「4時間でお茶の味が落ちてしまうので必ず廃棄」という徹底した製法/品質管理。茶の抽出開始時に、スタッフがその時刻を記したシールを貼り鮮度にこだわり抜いています。

一番人気はタピオカ入りの「ブラックミルクティー」

第2が「選択の多様性」です。ゴンチャでは約7割の顧客がトッピングを選択。アロエ、ミルクフォーム、ナタデココに定番のタピオカと4種類をチョイス。甘さのシロップはゼロから少なめ、普通、多めと4段階。氷の量も4段階。その組み合わせは「1万通り」にもなるそうです。一番人気はタピオカ入りの「ブラックミルクティー」。人気の高いタピオカは本場台湾から直輸入して店舗で丁寧な仕込みを行い、新鮮なものを提供(作ってから5時間以内)。

フルーツと親和性の高い「阿里山ウーロンティー」とパッションフルーツ、マンゴー、ピーチとミックスすれば、茶葉のコク/香りと、フルーツの豊かな風味のハーモニを堪能できるだけでなく、SNS映えする「ドリンクのカラー」を通して「視覚」でも楽しめます。

第3が「店舗政策」です。同社の場合、店内の調理は火を使わず、全て電気で行うオペレーションが採用されているため、路面店だけでなく、火を使えない場合もある駅ナカ店など、出店先の選択肢が幅広く柔軟性があります。

第4が「顧客サービス」です。カフェチェーンでは珍しく、学生証を提示すれば学割価格で提供。例えば760円の Lサイズは560円へと、200円も割安。これにより、学生が学食のカフェのように通ってくる効果が生まれているそうです。

さらに、「スタッフによる分業制」による顧客を待たせない仕組み。カウンターのスタッフが接客するその後ろで、別のスタッフがトッピング、シロップ、氷を入れてまた別のスタッフにバトンタッチし、すぐさまティーを注ぐというスピーディーな流れ作業。

現社長の角田 淳氏のモットー「大事なのは楽しむこと。だから一生懸命になれる」

現在、ゴンチャジャパンを牽引しているのが、社長の角田 淳(つのだじゅん)氏。角田氏は、米ペンシルベニア州立テンプル(Temple)大学卒業後、大手自動車メーカーに就職。その後独立し、スポーツや音楽イベントの企画やマネジメントを手がけ、2010年に日本サブウェイに入社し、マーケティング、経営企画などを経て、2016年社長に就任。2021年からゴンチャジャパン代表取締役社長。

角田氏がゴンチャジャパンの社長に就任した時期は売り上げが低迷していた2021年。このとき、優れた経営手腕で社内の問題を次々と解決。その様子を振り返り、角田氏は、社内の問題を迅速かつ着実に消化する「消防士」に自ら例えています。

自身の経営信条は「大事なのは楽しむこと。だから一生懸命になれる」。南米出身の母親を持つ角田氏は幼少期をブラジルで過ごし、陽気でおおらかに楽しむ生き方が自然と身についたそうです。

『専門店化』を徹底するために「コーヒー?188bet体育_188bet体育在线@」を廃止!

角田氏の改革のいくつかを確認しましょう。第1が、『専門店化』を徹底するために「大胆にコーヒー?188bet体育_188bet体育在线@を廃止」したことです。2024年の4月からほとんどの店舗でカフェの定番、コーヒーを廃止。コーヒー廃止後、1店舗あたりの売上は増えているという。

「我々はお茶へのこだわりをもって運営しているので、そこに集中したい。例えば、ラーメンは 中華料理店ではなくラーメン店で食べたいという考え方のもと、まずは専門店として認識してもらう」と、角田氏はその意図を説明しています。

この戦略は、「コア?コンピタンス」(core competence、「中核力」)に基づいているということができます。コア?コンピタンスとは、企業が市場(マーケット)で長期的に競争優位性を持つための独自の強みや専門能力を指します。

ゴンチャの「コア?コンピタンス」と「ユニークセリングポイント」

コア?コンピタンスの概念は、経営学者のC?K?プラハラード氏(C.K. Prahalad)とゲイリー?ハメル氏(Gary Hamel)によって提唱されました。ゴンチャの場合、台湾茶/烏龍茶の高品質なお茶の専門知識がコア?コンピタンスと見なされます。この強みに集中することで、コーヒーなど幅広い飲み物を提供する競合他社との差別化を図り、台湾茶愛好家を惹きつけ、プレミアム価格(特別な商品に伴う付加価値を考慮した価格)を設定することができ、専門店としてのブランドアイデンティティを強化しています。

換言すれば、ゴンチャは最も得意とする台湾茶の分野で、「独自の販売提案」(USP)を維持し、ティーカフェのブランドを確立しています。また、コーヒーを提供しないことで、提供する製品と業務を簡素化し、主力製品である台湾茶の品質管理と効率をさらに高めることが可能となるのです。

ここにでてくる「USP」(Unique Selling Point、「ユニークセリングポイント」)とは、他社製品やサービスにはない、特定の企業や製品、サービスが持つ「独自の強み」や「他と差別化できる特徴」を指します。日本語では「独自の売り(強み)」や「差別化ポイント」と訳されることがあります。

「おしゃべり」空間を醸成!

第2が、顧客の「おしゃべり」を醸成することによる「空間、スペースとしての差別化」です。そのために、ゴンチャの店舗の構造を変更し、壁際に仕切りのついた席を設置。そのサイズは、一般の「二人がけ」より狭めの1.5人席。こうしたデザイン的な「仕掛け」により、顧客に至近距離で思いきりおしゃべりしてもらうための環境を整備。女性客からは、「仕切りに囲まれて落ち着く」「近くて話しやすい」と好反応を得ているそうです。

「楽しむ」を経営信条にしている角田氏は、「お茶とのひとときが、イコール時間を有意義に過ごす、楽しむことかなと思っていますので、皆さんの過ごす時間の価値を上げていきたい」と解説しています。

第3が角田流「MBWA」です。「Management By Walking Around」(「現場をぶらぶら歩くことによるマネジメント」)。経営者やマネジャーが現場を歩き回って社員と交流することで、社員をよく知り、現場の空気感をつかみ、組織の状況を把握するマネジメントスタイルです。このMBWAにより、経営者/マネージャーと従業員が一体となり、(心理的な)境界線を取り払い、コミュニケーションを改善し、日々の業務を正確に把握することが可能となります。その結果、良質な情報に基づいた意思決定が可能になり、生産性や従業員の士気も向上します。

MBWAの概念は、トム?ピーターズとロバート?ウォーターマンの両氏が1981年に出版した『In Search For Excellence』(邦題『エクセレントカンパニー 超優良企業の条件』)によって世界的に広まりました。

角田流MBWAで全国の店舗を歩き回る!

角田氏は全国の店舗を回り、アルバイトから直接、日頃思っていることを聞き出し、働きやすい職場環境を整えるように取り組んでいます。

東京?目黒区の自由が丘店でのエピソード。「困っていることはありますか」という角田氏の問いかけに、「音楽が聞こえづらい」というスタッフからの反応。「働いている時も音楽が聞こえたほうがいい。どんな音楽がいいですか」とさらに角田氏が聞くと、「はやっているJポップとか」という返事。

その後すぐに、自由が丘店の店内にはJポップが流れ、スタッフの顔も生き生きと変化したそうです。また、角田氏は細かく決まっていた髪の色のルールを撤廃したそうです。

ちなみに、SNSのショート動画で求人情報を提供するサービス「グルメバイトちゃん」を運営する株式会社シンクロ?フードが実施したアンケート調査(2024年5月16日)では、飲食店でアルバイトを探す時に最も重要な条件として、最も多い回答は、「服装?髪型?ネイルが自由」(46%)、次いで「給与が高い」(24%)、「お店の人間関係が良い」(12%)という結果になりました。アンケート回答者は10代が54%、20代前半が38%と約9割がZ世代で、80%が女性。

第4が「コンビニとの新しいコラボ」です。それが、「セブン-イレブン限定でゴンチャのペットボトル」。ゴンチャ初のペットボトル飲料(181円)で、黒糖烏龍ミルクティーと阿里山ピーチティーの2種類。製造するのは飲料大手の「キリンビバレッ ジ」。店舗と同じ産地の茶葉を使用。試作は60回繰り返し、ゴンチャの味を忠実に再現。2024年7月2日からゴンチャのペットボトルが「セブン-イレブン」の商品棚に並びました。想定を大きく上回る品薄状態になるほどの売れ行きとなり、ゴンチャの新たな可能性を開拓しました。

ショート動画サイトTikTokでは「もう飲んだ??めちゃめちゃ美味しくてリピ確定?」というコメントともに、ゴンチャのペットボトル「黒糖烏龍ミルクティー」とセブン-イレブンの「黒糖わらび」を混ぜ合わせて独自のアレンジレシピを紹介する動画も流れています。

国内カフェブームが継続するなかで、コーヒーではなく「ティーカフェ」という独自のポジションを占めながら、引き続き、ゴンチャがどのように日本社会に「ティー文化」を定着させ快進撃を維持していくのか、要注目です。

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