マーケティング最前線!

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大ヒット中「ノアール」(暗黒)ドラマ「地面師たち」で大注目のNetflix社が教えてくれる真のDX(ディーエックス)とは?

2024.10.07

DX(ディーエックス)とともに進化し続けてきた「Netflix」社を事例にして、「ビジネスモデルを変革する」真のDXとは何かについて整理します。そして、現在、Netflixといえば、超人気「ノアール」(暗黒)ドラマ『地面師たち』。ビジネスパーソンの居酒屋トークの最新の鉄板ネタにもなっているドラマの概要も紹介します。

そもそも「DX」ってなに?

「Digital Transformation」(デジタル?トランスフォーメーション)の略語、「DX」(ディーエックス)。この言葉が、ここ数年、ビジネスの「トレンドワード」になっています。

2本の線が交差している形から、アルファベットの「X」が一般的に「クロス」を指すのに使われます。一方「trans-」は交差/横断を意味し、「trans-」と「cross-」は類語。そのためDXの「transformation」の略語として「X」と表現されます。ただし、英語の文献/記事/資料では、「DX」ではなく「Digital Transformation」とそのまま表記されるケースが多いようです。

野村総合研究所(NRI)が、DXを次のように説明しています。「企業が、ビッグデータなどのデータとAIやIoTを始めとするデジタル技術を活用して、業務プロセスを改善していくだけでなく、製品やサービス、ビジネスモデルそのものを変革するとともに、組織、企業文化、風土をも改革し、競争上の優位性を確立すること」(原典: 経済産業省『デジタルガバナンスコード2.0』(旧『DX推進ガイドライン』(2018年))。

「ビッグデータ」「AI」そして「IoT」

「ビッグデータ」(Big Data)とは「日々生成される多種多様なデータ群」のことで、「交通系ICカードに記録される乗車履歴やGPSから得られる位置情報、メールの内容、SNSの画像投稿やコメントといったデータが大量に蓄積されたもの」など(総務省定義)。

「AI」(Artificial Intelligence、人工知能)とは、「人間の思考プロセスと同じような形で動作するプログラム、あるいは人間が知的と感じる情報処理?技術といった広い概念」(同省定義)。2022年11月30日に米オープンAI社が公開した対話型AI「Chat(チャット)GPT(ジーピーティー)」は、世界的な生成AI(人工知能)ブームのきっかけになりました。最近は、「Microsoft Copilot」」(コパイロット、「副操縦士」に由来)などにも注目が集まっています。

「IoT」(アイオーティー)は「Internet of Things」の略で、「モノのインターネット」と呼ばれ、「自動車、家電、ロボット、施設などあらゆるモノがインターネットにつながり、情報のやり取りをすることで、モノのデータ化やそれに基づく自動化等が進展し、新たな付加価値を生み出す」こと(同省定義)。

DXをよりわかりやすく表現すれば「単に新しいデジタルテクノロジーを採用するだけではなく、組織の考え方を大きく変え、これまでとは異なる思考を取り入れ、新しいビジネスモデル(収益をあげる事業仕組み/構造)を採用すること」といえるでしょう。

『DX白書2023』(独立行政法人情報処理推進機構(IPA)2023年2月)は、欧米企業に比べて、日本企業のDXが進まない主な理由として次の5つを指摘しています。(1) 経営層がITに弱い、(2) DXを全社で推進する体制がない、(3) DX人材の不足、(4) レガシーシステムの存在、(5) ベンダーロックイン(ベンダーへの依存)。「レガシーシステム」とは、20年以上前の過去の技術で構築されている時代遅れのシステム。ベンダーロックインとは、ある企業の基幹ITシステムが特定のIT関連販売企業に依存してしまっていて、自社のコントロールが効かないこと。

「DX」と「リエンジニアリング」の違いは?

さて、DXと似たような意味を持つ言葉として「BPR」があります。BPRとは、「Business Process Re-engineering」(ビジネスプロセス?リエンジニアリング)の略称で、日本語では「業務改革」と訳されています。

BPRは、(30年も前の)1993年にアメリカで出版された『リエンジニアリング革命』(マイケル?ハマー/ジム?チャンピー著)という書籍がベストセラーとなり、世界的に広まりました。同書では、BPRは、「コスト、品質、サービス、スピードのような、重大で現代的なパフォーマンス基準を劇的に改善するために、ビジネスプロセスを根本的に考え直し、抜本的にそれをデザインし直すこと」と定義されています。

その定義にあるとおり「プロセスをデザインし直す」ということなので、BPRは「ビジネスモデルを変革する」ところまでは想定していないようです。

新型コロナ禍という大きなきっかけはありましたが、現在、日本の多くの企業も、業務効率と生産性を向上させ、ビジネス?パフォーマンスを改善するためにITツールを積極的に活用しています。たとえば、社内コミュニケーションツールとしてSNSやWeb会議システム(ZoomやGoogle Meet)の導入。社内申請手続きなどのマネジメント工数を削減し、営業/経理/労務管理システムのクラウド化によるペーパーレス化など。

なお、「クラウド化」(Cloud Computing System)とは、自社サーバー(デジタルのデータ保管コンピュータ)などを設置して利用していた既存の情報システムを、外部の事業者(企業)のクラウドサービス(Amazon Web Serviceなど)を利用する方式に移行することです。

しかしながら、単なる「ITツールの活用」は、本質的にはBPRによるプロセスの見直しに分類され、真の意味で、ビジネスモデルを変革する「DX」には当たらないと理解されています。

ビジネスモデル変革のDXとともにあるNetflix

では、ビジネスモデルを変革する「DX」の「ベストプラクティス」(最善慣行/成功事例)にはどのようなものがあるのでしょうか?それに関して、立教大学ビジネススクール(同大学院ビジネスデザイン研究科)の田中道昭教授が、Netflixのビジネスモデルの変遷を「4段階」に分け、「Netflix1.0」から「Netflix4.0」と名付けて、明快に分析しているので紹介しましょう。(『デジタルシフトタイムズ』[2021年11月10日記事])。事実、米国の資料/記事で、DXの成功事例のひとつとしてNetflix社が取り上げられることが多いようです。

Netflix社は、1997年にアメリカの起業家リード?ヘイスティングス(Reed Hastings)氏とマーク?ランドルフ(Marc Randolph)氏によって設立されました。「Net」は「Internet」に由来。「flix」は「映画」の意味を持つ「flick」の別表現。

本社は、米国カリフォルニア州ロスガトス(シリコンバレーの南の端)に所在。映画やテレビ番組をひとつのプラットフォームでストリーミング視聴できるサービスで知られ、自社オリジナル作品の制作/配信も行っています。現在、有料ユーザーは世界全体で約2.8億人。2023年の売上高は337億ドル(約5兆円)、純利益は54億ドル(約8,000億円)で、ともに創業以来の最高額を記録。

Netflixは当初、ブロックバスター(Blockbuster)社のビデオレンタルのビジネスモデルを「破壊」(disrupt)して人気を博しました。それ以降、同社は、ビデオストリーミング(動画配信)やコンテンツ制作会社として極めて大きな存在感を示しています。

「Netflix1.0」は「DVDのオンライン郵送サービス」

では、立教大学田中道昭教授が着目するNetflix社の4つのフェーズ(局面)を確認しましょう。

「Netflix1.0」は同社の創業期の局面です。当時、アメリカのDVDレンタル業界では店舗型ブロックバスター社の一強でした。それに対して、Netflix社はDVDのオンライン注文/郵送サービスという新しいビジネスモデルをスタートさせました。このモデルの強みは、顧客からの「オンライン注文」の仕組みによって、レンタルDVDショップに平積みされるような話題作/ヒット作だけではなく、過去の名作などニッチな商品(視聴希望者層が少ない)がレンタルされるようになったことです。つまり、コンテンツ販売の「ロングテール化」に成功したのです。

「ロングテール」(the long tail)とは、主にネットにおける販売においての現象で、売れ筋のメイン商品の売上よりも、あまり売れないニッチ(隙間)な商品群の売上合計が上回る現象のことを意味します。アメリカのテクノロジー文化専門誌『WIRED』誌編集長のクリス?アンダーソン氏が提唱した概念です。「売れ筋商品」と「それ以外の商品」を売上順に並べたとき、売れ筋商品が「恐竜の頭」(short head)に、そして売上の少ないほうの商品郡(テール)が、低く長い恐竜のしっぽのように図示されるため「ロングテール」(長いしっぽ)と呼ばれました。

「Netflix2.0」はDVDレンタルのサブスクリプション?モデル

続く「Netflix2.0」は、1999年、Netflix社が他社に先駆けてDVDレンタルのサブスクリプション?モデルを確立した局面です。「サブスクリプション」とは、月単位または年単位で定期的に料金を支払い利用するコンテンツやサービスのこと。商品を「所有する」ではなく、一定期間「利用」することに対して対価を支払うビジネスモデル。

さらに、このサブスクリプションモデルを通して、Netflix社は、データに裏打ちされた顧客とのエンゲージメント(深いつながり)を強化することにも成功しました。そして、2000年、Netflixは会員の評価に基づき、各会員にお勧めの作品を提示する「レコメンド機能」を導入。また、2002年には、新興企業向け電子株式市場「NASDAQ」(ナスダック)に上場し、財務基盤を強固なものにしました。

一方、ビデオ/DVDの店舗型レンタルの巨大企業ブロックバスター社は、2004年のピーク時は6万人以上の従業員で、9,000店舗以上を展開していました。しかし、2000年代後半以降に経営が悪化し、2010年9月に経営破綻に陥りました。顧客の支払う「延滞料」が収益の大きな部分を占めるという収益構造(ビジネスモデル)にあって、顧客ニーズが変化し、Netflix型の電子メールによるオーダーやオンラインでの注文といった事業モデルへの適応が遅れたことが破綻の原因でした。

「Netflix3.0」は動画ストリーミングの導入

次の「Netflix3.0」は、「動画ストリーミング」(Video Streaming)という技術の導入(2007年1月)です。ストリーミング配信は、すべてのデータを一度にダウンロードする必要がないため、素早く動画の視聴が可能となります。

同社は、ゲーム機、その他の電子機器メーカーと提携し、これらの機器でのビデオストリーミングを可能にしました。さらに、2010年までにストリーミングのみの定額サービスプランを導入し、同年iPhone向けのアプリを発表したのでした(2011年までに一部のAndroid端末でも利用可能になった)。

「Netflix4.0」はオリジナル作品の製作

「Netflix4.0」はオリジナル作品の製作です。同社は、既存の映画会社が製作した作品の配信だけでなく、オリジナル作品の製作にも乗り出しました。中でも同社が2013年に配信を開始したドラマ『ハウス?オブ?カード 野望の階段』(House of Cards)には製作費として1億ドル(約123億円)もの巨額が投じられたことで話題となりました。また、従来のテレビ放送のように毎週1話ずつではなく、1クール全話での一斉配信を行ったことにより、アメリカ国内では俗にいう「一気見」(Binge Watch、イッキ見)をする人が続出し、今日まで続く社会現象となりました。

田中道昭教授は、以上のようなNetflixのビジネスモデルの変遷を、DXの基本となる「つながる(コネクト)、深める(エンゲージメント)、成長させる(グロース)」という段階(フェーズ)を着実に踏んできた結果であると、分析しています。

「Netflix5.0」は「インカメラVFX」?

このNetflix社が、現在、映画/ドラマの撮影プロセスにもデジタル技術による大きな変革を起こしています。それが、「バーチャル?プロダクション」「インカメラ(In-Camera)VFX」と呼ばれる最新テクノロジーです。今までは後?程だったVFXの作業を撮影時に実現しようという試みです。その最たるものが「巨大LEDスクリーン」の活?です。もしかしたら、これが「Netflix5.0」と呼べる局面(フェイズ)かもしれません。

今まではグリーンバックで撮影したあとに、CG(コンピューターグラフィックス)の追加や合成作業をしていたところを、今はLEDスクリーンであらかじめ背景などを投写しておくという?法が導入されています。つまり、巨大なLEDの壁に3DでつくったCG(コンピューターグラフィックス)を映し出し、それを背景として、俳優たちをリアルに撮影する方法です。ちなみに、「グリーンバック」(Green Screen)とは、その名の通り緑色の背景のことで、これを背景にして動画を撮影し、後に合成動画を作成する手法を指します。

「VFX」(ブイエフエックス、視覚効果、visual effects)は映画やテレビドラマなどの映像作品において、現実には見られない画面効果を実現するための技術。VFXは撮影後の「ポストプロダクション」(post-production、撮影完了後の全ての作業)段階に付け加えられる効果を指します。

実際の天候に左右されない撮影が可能に!

この「インカメラVFX」には、従来の撮影方法に根本的な変革をもたらす次のようなメリットがあるとされます。第1が、ロケ地の選択に自由度が増すこと。たとえば、物理的に撮影困難であってもデジタル映像をうまく活用する可能性が生まれてきます。第2が、実際の天候に左右されないこと。事前に晴天を撮影しておき、それを活用することが可能となります。

第3が、セッティング時間の節約です。たとえば、カーチェイスをもう一度撮影し直す場合、実際のクルマの位置を元に戻すような作業の必要がなくなります。第4は、スカイライン(空/海/山)などのような撮影時間に制約があるものも、事前に撮影して利用できます。第5が、グリーンバック撮影にある「俳優は状況を把握しにくく、違和感のある撮影」が、よりリアルかつナチュラルになることです。

超話題の暗黒ドラマ『地面師』たち!

さて、DXとともに進化し続けているNetflixですが、最近の超話題作といえば、綾野 剛 氏と豊川悦司 氏がダブル主演を務める『地面師たち』(じめんしたち、英文タイトル「Tokyo Swindlers」、7月25から日世界同時独占配信中/全7話)です。ビジネスパーソンの居酒屋トークの最新の鉄板ネタになっているそうです。

「地面師たち」予告編 – (By Netflix)

新庄 耕 氏の同名クライムノベルを大根 仁(おおね ひとし)監督が実写化した作品です。大根監督の過去の作品は、ドラマ『トリック』『モテキ』『まほろ駅前番外地』『エルピス-希望、あるいは災い-』、映画『モテキ』『バクマン。』など。今作『地面師たち』は、不動産売買を餌に巨額の金を騙し取る詐欺師集団「地面師」たちの欲にまみれた事件を描くクライムサスペンス。ノアール系に分類する評論家もいます。「Noir」(ヌワール、ノワール、ノアール)はフランス語で「黒」という意味。「暗黒小説」「フィルム?ノワール」は小説/映画の一分野。闇社会を題材にして、人間の悪意や差別、暴力などを描き出す作品が多いようです。

主な出演者(敬称略)は次のとおりです。綾野剛、豊川悦司、北村一輝、小池栄子、ピエール瀧、染谷将太、松岡依都美、吉村界人、アントニー、松尾諭、駿河太郎、マキタスポーツ、池田エライザ、リリー?フランキー、山本耕史。劇伴音楽の担当は石野卓球(電気グルーヴ)氏。「劇伴」(げきばん)とは、映画、演劇、テレビドラマやアニメなどの中で使われる音楽のこと。語源は「劇の中の伴奏の音楽」。地面師チームの一員を演じたお笑いコンビ「マテンロウ」のアントニー氏が、製作予算が破格だと噂されるNetflixオリジナル作品の「ギャラ」(出演料)事情に関して、脇役だったにも関わらず「僕レベルで、あっ、こんなもらえるんだ」と情報番組で激白し番組共演者を驚かせていました。

「ハリソン山中、怖いし、本当にやばい!」

綾野剛氏は、家族を失った主人公?辻本拓海が抱える強烈な悲しみや心の痛み、そして寂しさを、静かにそして丁寧に演じています。

またハリソン山中(豊川悦司氏)のサイコぶりには息をのむという観客の感想が多いです。実力派女優の小池栄子氏は、撮影中、豊川氏のハリソンと「10秒目を合わせたら殺られちゃう」というような恐怖感と支配力を感じたと話しています。SNSでは「ハリソン、怖い!」「ハリソン、本当にやばい!」というコメントが並んでいます。

くわえて、地面師のターゲットになる大手不動産企業/開発部長の青柳(山本耕史氏)の「24時間戦えますか」型企業戦士が乗り移ったような好演もSNSなどで大きな話題になっています。

『地面師たち』を見始めたら、もう止まらない!

この「地面師たち」は、Netflixの日本トップ10で初登場1位を獲得して以来、4週連続首位を記録するなど、大ヒットしています。実際、SNS上では「イッキ見した」というコメントが溢れています(1話あたり1時間前後で全7話)。

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