「好きなアメリカンフードは?」と問われた大谷翔平選手の答えは?
2022年7月19日、米国南カリフォルニアのローカル放送局「バリースポーツ?ウエスト」(Bally Sports West)が、MLBオールスターゲーム(ドジャーススタジアム)の舞台裏として、大谷翔平選手の様子を動画で紹介しました(ベースボール専門メディア『Full-Count』)。
動画のなかで、「好きなアメリカンフードは?」と記者から問われ、大谷選手が「In-N-Out」(イネナウト)と即答し報道陣が爆笑。「Apple TV+」のレポーターは「彼は分かっているわね!」と応じました。
この投稿動画に対して、「(In-N-Out)知ってるんだね!」「お見事!ショウヘイ」「本物のカリフォルニア市民」と多数の好意的なメッセージが寄せられたそうです。
大谷選手が推す日本未上陸「In-N-Out」バーガー!
大谷選手が推す「In-N-Out」バーガーとは?「In-N-Out」バーガーは、「アメリカ最大のカリフォルニア州の名刺の代わりになる」と表現する人も少なくありません。
「In-N-Out」(イネナウト)は、「In-and-Out」(入って、出て)を口語調で表現したものです。アメリカ人との話題に困ったら、「イネナウト」バーガーについて、「発音の仕方」を含め質問してみてください。きっと、笑顔でいろいろ教えてくれて、会話が盛り上がることでしょう。
「In-N-Out」は1948年の創業以来、フランチャイズ(加盟店)による出店は1店舗もなく、ファミリー主導の自社経営を重視する方針をとっています。同社はIPO(Initial Public Offering: 株式公開)も実施していないため、現在も個人所有の(未公開)企業です。2021年のデータですが、売上高は10.7億ドル(1,517億円)です。赤い文字の店名「IN-N-OUT Burger」に、「Vの字」を横にしたような黄色い矢印が添えられたロゴマークが印象的です。
「In-N-Out」は、アメリカで最も人気のあるバーガーチェーンの一つですが、日本には「未」上陸です。そのため、アメリカンフードの「最後の『黒船』」とも形容されます。ここでの「黒船」とは、日本に大きな衝撃をもたらすアメリカ発祥のもの、という意味です。「週5日食べても飽きない」と、アメリカで「In-N-Out」の自然の味に魅了されたファンが、日本にも多数存在します。
「In-N-Out」の店舗の7割がカリフォルニア州に集中!
「In-N-Out」は、2023年5月17日現在、米国内で391店舗を運営しています。米国で最も店舗数が多いのはカリフォルニア州の270店舗。全米の「In-N-Out」の約70%に当たります。「In-N-Out」がカリフォルニアを代表するといわれる理由がそこにあります。なお同州以外には、テキサス(全体の10%)、アリゾナ(同9%)、ネバダ(同6%)などの州に展開していますが、ボストン、ニューヨークなどの東海岸には店舗はありません。
「In-N-Out」バーガー社は、1948年、ハリー&エスター?スナイダー(Harry and Esther Snyder)夫妻によってカリフォルニア州ボールドウィン?パーク(Baldwin Park、ロサンゼルの中心からクルマで東へ30分)に設立されました。ちなみに、ボールドウィン?パークからクルマで南に1時間ぐらい走ると、大谷選手やマイク?トラウト選手の所属チーム、エンゼルスが拠点とする「エンゼル?スタジアム?オブ?アナハイム」に着きます。
「In-N-Out Burger」社の現社長はリンシ?スナイダー(Lynsi Snyder)氏。彼女は、ハリー&エスター?スナイダー夫妻の孫に当たります。そして、純資産42億ドル(6,000億円)と報じられている大富豪です。
家族的経営を重視する「In-N-Out」の188bet体育_188bet体育在线@は1948年以来変わらず、「最高品質の製品のみを提供し、清潔できらびやかな環境で調理し、スタッフによる温かくフレンドリーな態度で提供する」というシンプルな経営哲学を守り続けています。「In-N-Out」のスタッフの質の高い接客サービスの背後には、スタッフに対する賃金面での厚遇があると分析されています。賃金統計サイト「ZIPPIA」によると、「In-N-Out」スタッフの平均給与(カリフォルニア州)は年間38,904ドル(約560万円、2022年12月)で、時給18.7ドル(約2,700円)となっています。
ハンバーガーをベースにした最小限の基本188bet体育_188bet体育在线@をリーズナブルな価格で顧客に提供し、すべての食材を手作業で調理するのが大きな特徴です。つまり、牛肉などの食材に対して、冷凍や加工、包装など「過度」な工程をほどこしていません(冷凍食品?電子レンジ未使用)。そして、作り置きなしで、注文を受けてから調理する「昔ながらの」伝統的な手法で作られる新鮮なバーガーを提供しているのです。
双方向のスピーカーによって「ドライブスルー」を発明!
夫のハリー?スナイダー氏は、店舗でハンバーガーを調理する長い一日の後、夜はガレージ(車庫)で熱心に働きました。顧客が車に乗ったまま注文し、食事を受け取れるテクノロジーを追求していたのです。店舗オープンと同じ年の1948年、彼は双方向の「ラウドスピーカーボックス」を通じてドライバーが車内にとどまったまま注文できる技術を導入しました。今日の「ドライブスルー」(Drive-thru)方式です。ちなみに、「thru」は「through」の省略で、カジュアルな場面で使用されます。
彼が発明した「2ウェイ?スピーカー?ボックス」の導入により、顧客は店舗に車で乗り入れて(IN)、オーダーし商品を手渡されすぐに立ち去れる(OUT)、つまり「IN AND OUT」できるようになったのです。そして、このドライブスルー方式が会社/ブランド名として受け継がれたのです。
1954年には、「ロゴ」が更新されました。当初の「No Delay」(お待たせしません)の看板に代わり、「In-N-Out」を象徴する矢印のロゴが初登場。この新しいロゴに触発され、「In-N-Out Burger社」は 「The arrow points to pride.」(矢印は誇りを指し示している)、「We all work under the same arrow.」(私たちは皆、同じ矢印の下で働いている)というスローガンを採用しました。
さらに、「In-N-Out」は、低炭水化物ダイエットが流行するずっと以前の1955年、すべての具材をレタスの葉で包んだ、「バンズ」(buns、パン)なしのハンバーガー(シークレット?188bet体育_188bet体育在线@「プロテイン?スタイル」)を販売し始めました。「In-N-Out」の「進取の気性」が読み取れます。
「In-N-Out」の基本188bet体育_188bet体育在线@と価格は?
基本188bet体育_188bet体育在线@はとてもシンプルで「4品」しかありません。価格(2023年4月時点)とともに確認しておきしょう。第1が「ダブルダブルバーガー」(Double-Double Burger)。中身は、トーストバンズ、チーズスライス2枚、ビーフパティ2枚、オニオン、レタス、スプレッド(塗り物)、トマト。値段は $4.90(約700円)。第2が「チーズバーガー」。中身は、トーストバンズ、チーズスライス1枚、ビーフパティ1枚、オニオン、レタス、スプレッド、トマト。$3.50(約500円)。
第3が「ハンバーガー」。トーストバンズ、ビーフパティ1枚、オニオン、レタス、スプレッド、トマト。$3.15(約450円)。第4が「フレンチフライ」。100%ひまわり油で手切りした新鮮なポテト。$2.15(約300円)。
このように188bet体育_188bet体育在线@数が限定されていることで、「In-N-Out」商品の製造コストが下がり、それがリーズナブルな価格設定につながっていると分析されています。
一方で、次のような「シークレット?188bet体育_188bet体育在线@」(裏188bet体育_188bet体育在线@)も存在します。まず「裏188bet体育_188bet体育在线@」を知っていること自体が、自慢や自己肯定感につながります。一般に、裏188bet体育_188bet体育在线@を出してもらった顧客は、「他の顧客と異なる厚遇」をしてもらうことで、「優越感」「スペシャル感」を味わうとされます。
そうした裏188bet体育_188bet体育在线@の顧客は「ここまでしてもらっている」という「特別な感覚」を持つようになり、もうほかのお店に浮気はしなくなります。ビジネス的に表現すれば、裏188bet体育_188bet体育在线@の存在は大切な「常連客の流出」を防止するためともいわれます。
「In-N-Out」の場合、すでに、同社のサイトやネット上でも明らかになっているので、「公然の秘密」ですが、こうしたシークレット?188bet体育_188bet体育在线@も、「In-N-Out」の高い人気につながっています。
Double Meat (ダブルミート)???パテ(肉)が 2 枚。
3 × 3 (スリー バイ スリー)???パテとチーズが 3 枚。左側の数字がパテの枚数、右側の数字がチーズの枚数。
4 × 4 (フォー バイ フォー)??? パテとチーズが 4 枚。
Grilled Cheese (グリルド?チーズ) ???パテ(肉)の代わりにとろけるチーズが 2 枚。
Protein Style (プロテイン?スタイル)???バン(bun、丸いパン)の代わりにレタス。
Animal Style(アニマル?スタイル)???オニオンを細かく刻んで炒め、マスタードで味付け。シークレット188bet体育_188bet体育在线@のなかで最も人気が高いとされます。
全米で、一二(いちに)を争う人気ハンバーガー!
コンサルタント会社「マーケットフォース?インフォメーション」(Market Force Information)が発表した『2022年QSR/ファストカジュアル調査』(調査対象者:5,173名、2022年11月)があります。その調査で、「In-N-Out」は、米国で最高のハンバーガー体験を提供した「No.1ブランド」に選ばれました。「QSR」(Quick Service Restaurant)とは、日本のファストフードチェーンのことです。
「満足度」に関して、米国の消費者はハンバーガーショップで最も重要な要素として、「料理の質」「雰囲気」「サービスのスピード」「使ったお金に対する価値」「店員の親しみやすさ」をあげています。In-N-Outの総合満足度は80%で、マクドナルド(McDonald’s)の41%、バーガーキング(Burger King)の40%の2倍となりました。
「In-N-Out」は、QSC(Quality, Service and Cleanliness: 品質、サービス、清潔さ)において、食品の品質で82%、スタッフの親しみやすさで88%、清潔さで85%のスコアを獲得しました。これらのカテゴリーでは、次にスコアの高かったウィスコンシン州発祥の「カルバーズ」(Culver’s)とヴァージニア州発祥の「ファイブガイズ」(Five Guys)より約10%高い結果となりました。なお、ファイブガイズはサービスのスピードでは65%のスコアでトップとなりました。
東京?恵比寿で1日限定の「ポップアップストア」を展開
さて、その「In-N-Out バーガー」が、2023年6月7日、東京の恵比寿(東京都渋谷区)で、一日限定となる「ポップアップストア」を開設しました(『シブヤ経済新聞』)。
「ポップアップストア」とは、期間限定で、商業施設、駅の構内、イベントスペースなどに出店する形態の店舗のことをいいます。英語の「pop up」には「不意に現れる?出現する」という意味があります。ポップアップストアの目的は、マーケティング、ブランディング(広報/宣伝)、実地調査などです。
メキシコやニュージーランドなど世界の都市で展開している一日限定の「In-N-Out」ポップアップストアは、日本では2012年に原宿で初開催。今回の恵比寿のストアは、日本では5年ぶりの開設。
ストアオープンの情報は前日まで非公開。しかし、当日は電車の始発で駆けつける人もいて、1,000人以上が列を作ったとのこと。列はピーク時に200メートルほどまで拡大。
「In-N-Out」を知っていることが「ソーシャル?カレンシー」!
この現象は、SNSマーケティングの「ソーシャル?カレンシー」(social currency)の典型例といえます。「ソーシャル?カレンシー」を直訳すれば「社会的貨幣」。「最先端の情報を他人にシェアすることによって、シェアした本人の『社会的価値/評価』が高まる」という効果です。
当日提供された188bet体育_188bet体育在线@は、米国で人気の定番188bet体育_188bet体育在线@「ダブルダブルバーガー」(800円)をはじめ、「チーズバーガー」(600円)、「ハンバーガー」(400円)の3品。いわゆるシークレット188bet体育_188bet体育在线@も用意されたようです。グリルオニオンやフライマスタード、ピクルスなどを添える「アニマルスタイル」と、バンズの代わりにレタスを使う「プロテインスタイル」など。
ポップアップストア開設は本格上陸のための事前調査なのか?!
その日、接客にもあたった米国「In-N-Out Burger」海外特別企画マネジャーのルイス?エルナンデス(Luis Hernandez)氏は「2018年の京都以来となるイベント。日本に帰ってこられてとても気分がいい。東京の人たちはとても親切で、笑顔が多くて、街がきれい。たくさんの人が列を作ってくれた。他の都市でも開催したい」というコメントを残したそうです。
年内は日本でのポップアップストアは予定していないとのことです。「In-N-Out」がポップアップストアを開設するということは、マーケティング調査を行なっているということであり、日本への本格参入の可能性は「ゼロ」ではないと、楽観的にとらえてもいいかもしれません。
?さて、2023年春のWBC(ワールド?ベースボール?クラシック)に引き続いて、MLBの正式シーズンでも、大谷翔平選手は「二刀流」で大活躍です。ロサンゼルス?エンジェルス観戦ツアーの際に、大谷選手が推す「In-N-Out」バーガーに立ち寄る日本のファンは、今後さらに増加することでしょう。日本人の間でも「In-N-Out」ファンが着実に増えれば、日本上陸の可能性が高まるかもしれません。